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十日日記


2005-07-03

Link 『初等数学』を読む

クライン『高い立場からみた初等数学』(東京図書、1959年)という4巻本がある。原著初版の発行が1908年という古いものなので、20世紀以降の数学については触れられていないものの、初等数学の教育的問題について読みやすく書かれている……と言いたいところだが、幾何学のあたりからレベルが上がる。エルランゲン・プログラムの内容についても突っ込んで触れられているけれど、図書の貸出期間中に私はそこまで進まなかった。もっとも、読みこなせるだけの能力もない。

初等関数の微分積分などは、こちらにもあるていどの素養があるので気楽に読める。ちょっと興味を引いたのは、

世間では、この概念の中に神秘的なもの、証明できないものを感じとり、微分法は証明できない、ただ信じなくてはならない独特の哲学体系であるとか、あるいは露骨にペテンだとかいった偏見がもたれるに至ったのである。

と哲学者の無理解について触れられている部分だ。もちろん、現代の科学史家がそんなことを言うと物笑いの種にしかならないが、こういった反発に応じたラグランジュの微積分教科書にはdy/dxも登場せず、ただ導関数だけが形式的に定義される結果となった。その後のコーシー云々については、ここで書くほどのことでもないだろう。

またクラインは、当時の初等・中等教育では指数関数・対数関数の指導が代数操作になっていて、グラフの連続性について必ずしも自明ではない点を指摘している。これは日本の高校でも同じことで、「2のルート5乗は?」などと考え出す生徒が出てくると困ったことになる。

クラインの推奨する導入は、1/xの原始関数としてlog(x)を導出する方法である。ちなみに我が国では、一松信先生の教科書がlog(x)をそのように「定義」していた。導出に話を戻すと、ビュルギの方法に従って原始関数を導き出す方法がおもしろい。彼は指数関数の底を1.0001にして、次のような計算をする。x = (1.0001)^y,x + dx = (1.0001)^(y+1)。ここで後者から前者を引くとdx = 10^4/xになり、双曲線が出てくる。

この方式の欠点としては、「積を和に変換する装置」という見方が遠ざかる点にあろう。その証明自体は積分そのものなので容易なのだが、たとえば対数微分法のような実用的な計算を上の導入といかに結びつけるか。

その他の見所としては、eやpiが超越数(有理係数のn次方程式の解にはならないということ)であることの証明が挙げられる。邦訳は絶版だが、英訳でよければDoverから安く出ている。ただし、幾何学の難しいところは出版されていない。

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