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十日日記


2005-10-25

Link 歴代科学者の限界

山本義隆『磁力と重力の発見』(みすず書房、2003年)全3巻を読み終えた。第1巻を読んだのは去年のことになるが、第2巻「ルネサンス」、第3巻「近代の始まり」は近ごろ一気に読み通した。

表題の意味は、第3巻を読むころになってようやく理解できてくる。古代にはともに「離れていても作用する力」として一緒くたに扱われてきた磁石と琥珀が、磁力と静電気力に分離されたのはルネサンス後期のことだ。静電気力が近接作用として認識されたのちも磁力については遠隔作用と考えられ、それが惑星公転の理由づけにも用いられた。それが万有引力として分離されたのは、ニュートンによる。重力は、磁力との関連から発見あるいは創造されたのである。

さて、ここでは意地の悪い見方をしてみよう。昔の科学者の偉業についてはよく語られるが、何に関して間違っていたか・限界があったかという点については、あまり語られない。ニュートンが錬金術に凝っていた、というくらいだろうか。そこで、以下では天文学にまつわる話題で、誰が何に関して誤っていたかを前掲の書籍から得た知識を元に記す。曲がりくねりながらも科学が進歩していく様が見えると思う。

地動説といえばコペルニクスだ。彼は地球が公転していることは述べたが、実はコペルニクスの理論で太陽系の中心となっていたのは太陽そのものではなく、平均太陽と呼ばれるものを想定して中心としたらしい。また、彼が唱えていたのは静学であり、その点ではプトレマイオスと変化はない。太陽を楕円の一方の焦点とする楕円軌道を惑星が描くと正しく認識したのはケプラーである。

ケプラーはティコ・ブラーエの観察データから3法則を導いた。それどころか、万有引力にごく近いところにまで到達している。しかし、まだ慣性については得られていなかった。そこで、惑星が公転するためには常に何らかの力が必要だと考え、それを磁力に求めた。地球が巨大な磁石であることは以前から知られていたので、太陽もまた磁石であるとしたのである。

ケプラーの次はガリレイだが、地動説の悲劇のヒーローとしての一般イメージとは裏腹に、天文学を進めた業績はない。逆行した部分さえある。当時から月の影響が確実視されていた潮の干満について地球の自転と公転が原因であり、それこそが地動説を証明するものとしている。また、ケプラーの法則については無理解だったようで、惑星の円運動を仮定したままである。もちろん、慣性を発見したように力学に関する貢献は大きい。……疲れてきたので、このあたりでやめよう。

万人に奨められる書籍とは言いがたいが、科学と歴史との双方に興味のある人は、充実した読後感を味わえるだろう。

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