2005-12-30
Link 人名の世界史
読書を投資目的と消費目的とに2分すれば、辻原康夫『人名の世界史――由来を知れば文化がわかる』(平凡社新書、2005年)は完全に後者に位置する。外国人の名前の由来を知ったところで特に役立つことはなかろうが、歴史好きには興味深い本だ。特に英米系以外の姓については無知だから、ゴルバチョフの語源が「せむし男」だなんて聞いたら驚く。
著者は欧州の姓の由来を4分類している。(1)地域、(2)職業、(3)あだ名、(4)父姓。(1)はわかりやすい。エンゲルスは牧草地、モーツァルトは沼地の茂みといった具合。(2)もありがちだが、デカルトが代書屋だというのはいいなあ。(3)も意外と多いらしく、ルソーは赤毛の小男、ラッセルは赤ら顔、などなど。先のゴルバチョフはこのジャンルだ。(4)-sonや-senといった接尾辞やMc-やO-といった接頭辞がつくもの。これも、-itzや-off、-ovもそうだとは知らなかった。イワンの息子でイワノフだったのか。なお、欧州だけでなく東アジアや中東、アフリカの姓についても触れられている。
また、姓は「家」制度と結びついているという事実も認識を新たにさせられた。姓を古くからもつ東アジアに対し、欧州で庶民が姓をもったのは18〜19世紀にかけてだ。(古代ローマの姓名の伝統はいったん途絶える。)また、姓ではなく洗礼名を先にするというのも、キリスト教の影響を考えれば頷けることだ。
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