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十日日記


2006-01-29

Link 思い込みの激しい本

中小企業のワンマン社長と話していると、その人が妙な思い込みをしていることに気がつくことがある。事業をゼロから始めて一定の成功を収めるには信念が必要だろうから、思い込みの激しさは企業の生存に有利にはたらいたのかもしれない。

書籍の分野の中で著者の思い込みを意識させられるのは、ひとつは教育論であり、いまひとつは言語論である。思い込みの激しい本の特徴としては、(a)従来の理論を批判・非難し、(b)自説を著者独自の新規なものであると考え、(c)自説の適用限界を語らず、(d)参考文献が用意されていない――といったところだ。どちらも実体験があるため普遍的な考察をせずとも書けてしまうからだろうか。

最近読んだ本に、糸山泰造『新・絶対学力』(文春ネスコ、2004年)がある。先に言っておくと、同書はよい本だ。著者は文章を図解してイメージで考えることを「視考力」と名づけ、算数の文章題を図に表現する訓練をさせるための魅力的な問題を用意している。四谷大塚準拠塾で小4に算数を教えていた大学1年のころ、とにかく線分図が描けるようにさえすればよいと指導されたものだ。

気になるのは、著者が思考と計算とを簡単に二分してしまっている点だ。著者は筆算ができればそれでいいという。これは遠山啓の水道方式以来の方針で、基本的には間違っていないと思う。しかし実際には、計算問題であっても思考停止に陥ると非効率的になる。このことを明確に意識したのは微分幾何を習っているときで、式や図形の性質から想像できそうな結論に向かって式をデッチアゲるような感覚だった。積分の膨大な計算を機械的に書いていくと、かえって誤る。

算数のレベルでいうと、たとえば21.4×4.9の計算で、まずは20×5で約100になるという数的感覚がほしい。この感覚があれば、小数点を打ち間違えて104.86が10.486になっても変だと気づく。割合の文章題でも、12×0.35と式が立ったのち機械的に筆算するのではなく、半分よりも少ないという感覚を身につけるべきだと思う。それには著者推奨の図解も役に立つことだろう。図にしてみれば、半分よりも少ないことが一目瞭然だ。

小学校の算数はときどきしか見ないが、最近の小学生は筆算マシーンになっているのではないかと私は危惧している。2300×90のような計算は23×9のあとに0を3つ加えたものだが、いまの小学校では馬鹿正直に筆算で計算するようだ。あるいはまた194×105のような計算で、

  194
×105
-----
  970
 000
194
-----
20370

のように途中で0を3つ重ねる小学生がいて驚いた。

著者のホームグラウンドは算数のようで、この科目については基本的には賛同できる内容だ。ところが国語や英語など言語系の科目になると、疑問点や矛盾に思える箇所が増える。

たとえば著者は、「表現力の養成は早くても高校から」(p.76)とし、小学校で表現力を磨く不要だという。しかし、著者が推奨する文章題の図解は表現以外の何ものでもない。なにしろ自身で「問題解決学習とは、言ってみれば『文章を絵図で表現する練習』」(p.44)と述べているくらいだ。私自身は国語においても図解を積極的に取り入れたほうがいいと考えているし、逆に図から文章を組み立てるような――つまり文章構造を意識した作文訓練も行なうべきだと思う。実際に表現してみてこそ、筆者の表現の工夫を感じとることができる。

英語も同様だ。著者は英文和訳を否定し「語順訳」を提唱している。これ自体は平凡なものだ。驚くべきはここからで、英語の勉強では英語で考えることが重要なのではないという。「英語を理解できる日本語脳」を鍛えるべきであり、そうすると「何語でも日本語を介して使いこなせるようになる」(p.131)のだそうだ。不思議ではないか。視考力が最速かつ最も基礎的なものなら、日本語など介せず英語もイメージでとらえれば済む話だ。著者自身が次のように述べている――「頭のいい人がどんな言語で考えても頭がいいのは、語学力があるからではなく、イメージ力があるから」、「イメージで理解しているのに、文字や言葉そのもので理解していると勘違い」(p.42)。日本語はイメージで理解せよと言っておきながら、英語は日本語を介せという。この発想が私にはわからない。

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本日のツッコミ(全1件) [ツッコミを入れる]
Link 天才くん (2014-08-07 05:17)

>日本語はイメージで理解せよと言っておきながら、英語は日本語を介せという。この発想が私にはわからない <br> <br>随分と頭が悪いですね。 <br> <br>簡単です、言葉というのは、イメージを導くためのトリガー(引き金)だからです。 <br> <br>理解の対象はイメージであって、言葉(音)ではないということです。 <br> <br>そして、現代の私たちの世界は、スポーツ等を除けば、音や文字をキッカケにイメージに接近するというのが常態となっている文字文化なんですよ。 <br> <br>よって、英語を理解する場合には、日本語訳から導かれるイメージを使えと言ってるんですよ。 <br>もちろん、英語→イメージ→日本語で表現という順番も可能ですが、非効率的です。 <br>だってこの順番って古代遺跡の文字を解読する作業と同じですからね。 <br> <br> <br>

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