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十日日記


2006-09-14

Link 遺伝による階層形成

最近聞いた話。とある国立大学附属高校の生徒が精密検査を受けに大病院に行ったところ、担当の医療部長が部活動の後輩の父親だったそうだ。さらにセカンドオピニオンを得るために別の大学病院に出かけると、その担当医は学校の教員の同級生だったという。世界は狭い。

スティーブン・ピンカー『人間の本性を考える(上・中・下)』(日本放送出版協会、2004年)は主張が単純な割に内容はくどいし愉快な話でもないから、ところどころ飛ばしながら読んだ。その主張というのは、人間には遺伝的な特性がある、というものだ。総論では誰もが賛同する話なのに、話が各論に及んで特性の内容に触れ出すと、人びとは話を避けたがる。知能指数から性格に至るまで遺伝で決まってくるという現実は、人によっては受け入れがたいものらしい。

もっとも、上記のようなことは進化について興味を抱いている者には知れたことだ。私が気がつかされたのは、遺伝子による社会的階層の形成について記したくだりである。

ハーンスタインは次のように書いた。社会的地位は、人種や家柄や相続財産など、たまたま受け継いだものによって決まってしまう度合いが減ってくるにつれて、才能、とくに(現代の経済においては)知能によって決まる度合いが高くなるだろう。知能の差異は部分的に遺伝するし、知的な人は知的な人と結婚する傾向があるので、社会が公正になれば、それまでよりも遺伝子にもとづいて階層化されるようになるだろう。利口な人がより上層に進出し、彼らの子どもがそこにとどまる傾向がでてくるだろう(上巻p.207)。

たとえば現在の大学教員で、親もまた大学教員である場合は少なくない。私はそれを、親が知的な環境にあるから子もまた知的な環境に馴染むものだと思っていた。しかし実際には遺伝子のほうが要因としては大きいのだろう。ここでは皮肉なことに、「公正」な社会であればあるほど階層の固定化が進むという事態が予想されている。冒頭の「世界は狭い」話を聞いて、私はふとピンカーの本を思い出したのだった。

世代が進むと、アホとカシコとはもっと分離するのだろうか。去年までよく耳にしていた「学力低下」で取り上げられていたPISAの試験結果をよく見ると、日本の子供たちの順位が下がった最大の要因は、5段階評価で1と2とに当たる生徒が大幅に増えた点にある。(1が2.7%から7.4%、2が7.3%から11.6%。)授業時間数削減のしわ寄せが成績下位層に顕れたものと私は理解していたが、もっと単純にアホの子はアホということなのか。

ピンカー(2004)には「遺伝主義左派」(下巻p.45)という言葉が登場する。所得再分配の根拠に遺伝子の差異を持ち込もうとする一派だ。遺伝子的に不利な者は、落ち度なしに貧困線以下の生活を送る可能性が出る。よって機会の平等だけでは不十分である、という主旨である。

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