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十日日記


2008-04-07

Link 受験英語の源流

試験にでる英文解釈 週末にかけて、森一郎『試験にでる英文解釈』(青春新書、1972年)に目を通していた。300ページあまりの新書にすぎないが、読み通すには骨が折れる。活字は小さいし、内容が詰まっているからだ。

この本を手にとるまで、『でる単』に代表される同氏の著作物を私は見たことがなかった。『英文解釈』は新古書店の百円コーナーで目に止まり、誰かに薦められていたのを思い出して購入したものである。以来数年間本棚に祭り上げられていたのだが、昨日ようやく開いてみる気になった。

書名は「英文解釈」と銘打っているものの、実質的には構文集である。文法項目別に116の小項目を設け、それぞれ数〜十文程度の短文を載せている。したがって構文集としては文の数が多いことになり、「本書以外の英文解釈の公式・文型・パターンからの出題はありえない」という文句はあながち誇張ではない。覚えるのは大変だろうが。

気に入ったのは「本書の使い方」という部分だ。この部分を読むと、著者が受験生の能力や入試の現実をよく理解したプロフェッショナルだなと感心する。たとえば「入試問題テスト」という欄があって『英文標準問題精講』クラスの文章が並んでいるのだが、

そのさい、はじめから、巻末の訳文を見てくださることを、ぼくはむしろおすすめしたい。……正しい訳文を読んでも意味がわからないのに、それのもとである英文を見ても読解できるはずがないからである(p.9)。

という。国語力がないために抽象的な文章が読めない受験生を70年代にして想定しているわけだ。また和文から英文を作成する練習を積む必要があることを述べる一方で、

例文の太字あるいは斜字体(イタリック体)の部分をまちがいなく書ければよいのであって、それ以外の単語のスペリングはどうでもよいということだ(p.8)。

と指導するのは、入試問題が読解に偏重している現実を考えれば的確である。

おそらく同時代にあっての同書の最大の特徴は、こうした割り切りにあったのだろう。等号(=)を多用して同じ意味であることを強調したり、得点に結びつきにくい部分(たとえば描出話法)は一切カットされていたりする。だから「解釈」と言っても非常に浅薄なものである。浅薄といっても一日一善ではない。

その構文がどういう文脈で使えるかとか、あるいはどういう格式の文なのか、はたまたどのような含みを持つのか……といった点については、ほとんど触れられていない。あくまで和訳問題で点をとることに徹した本だ。簡略化しすぎて誤っている箇所もあるから、この本を使って覚えた例文を和文英訳に用いるのは危険が伴う。

前段落がどういうことかというと、たとえば日本語で「後生だから」とか「たいそう古うございます」などという文は、現代の日本語話者なら理解はしても発話しないだろう。それと同様に、except(接続詞)の意味でsaveを使ったりjust in caseに近い意味でlestを使うのは、なんというか大儀に聞こえる。

ところで最近新古書店で見つけた本に、講談社ルビー・ブックスというシリーズがある。難しい英単語の下に小さく緑色で訳語が書かれていて、字引がなくても原書が読めるという便利な仕掛けが施してある。新古書店では『ホームズ』の短編があったので、ありがたく購入させていただいた。

それで読んでいて気がついたのだが、学習参考書では学んだものの現在の文章では見たことがないような構文に、けっこうお目にかかるのだ。たとえば上に挙げた接続詞のsaveなど、もう3回は見ている気がする。ヴィクトリア朝の英語は、いわば受験英語の源流にあたるのだろう。明治期の参考書には、すでにクジラ公式があったという。

柳田国男の方言周圏論では、文化の中心地から離れた土地に古語が残るとされている。実際、アメリカ英語の一部はイギリス英語よりも古い英語の影響が残っている。(イギリスは18世紀に文法改革がなされた。)わが国の受験英語は、そういう観点で見れば19世紀英語が土着したものかもしれない。

Tags: 言語
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