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十日日記


2008-04-10

Link 読むのに疲れる本

表現のための実践ロイヤル英文法 英語を再復習するため、英文法の学習参考書をどれか1冊通読することにした。それで選んだのが、かねてより機会あるごとに参照していた綿貫・ピーターセン『表現のための実践ロイヤル英文法』(旺文社、2006年)である。この2〜3日英語ばかり考えていたため夢まで英語になってしまいヤバイと思ったので、英語の話題はここらで切り上げたい。

英語を教える立場の人にとって、同書はmustに近い本だろう。旺文社もそれがわかっていて、2色刷・728ページで1890円という破格値をつけているのだと思う。拾い読みして内容に満足していたころには、意欲ある高校1年生にも薦められる本だと考えていた。ただし通読した結果、同書は1冊目の学習英文法書としては不適格だとわかった。より正確には、読者層の絞り込みができていないのではないかと考えざるをえない。

本書はある意味で、『試験に出る英文解釈』とは対極にある。例外的な事項を広く集めるよりも、それぞれの表現にどのような含みがあるのかについて紙幅を割いている。また、文例が文学的ではなく、報道記事や科学的な文章から多くとられているのも同書の特徴だ。ヒョウ(雹)をhailstoneということなど、私は同書ではじめて知った。

1冊目の文法書としては薦められないのは明らかだ。例文の単語レベルが高すぎ、文法に集中できない。それに加え、一通りの文法知識が仮定されている。最初の数章で「この表現も実は仮定法」などという話があちこちに出てくるのだ。英文法を一通り学習していた40年前はいざ知らず、必須英単語が500語で、関係詞すら主格しか扱わない現行課程の中学校を卒業したばかりの人間には、とうてい読めない代物だろう。

となると、2冊目以降でレファレンスを兼ねた本というのが同書の位置づけになる。ところが、そうしてみると無駄が多い。たとえば申しわけ程度の章末問題など必要だろうか。あるいは例文解説にOPECやらEUについて説明があったりするわけだが、上記で仮定した使いかたをするような読者が、こうした語への説明を必要とするだろうか。複数形の作りかたといった中学レベルの話は、今さら不要ではなかろうか。本書の読者が求めているのは英語のニュアンスに関する情報であって、初歩的な文法規則ではないはずだ。無駄な部分を削れば、本書はもっと薄く読みやすくできたのではないか。はっきりいって、私は通読するのに疲れた。

本書のよい部分は例文とその解説とにある。だから実は、文法自体の解説の切れ味は、あまりよくない。また、「従来の英文法書」(p.iii)を批判しつつも、(例文ではなく)本文解説やリードの部分では、まさに「従来の英文法書」の顔を覗かせていることがある。また、イギリス英語に関する記述のチェックは少し甘いようだ。

たとえば本文解説p.275にある「fancy(なんとなく〜だと思う)」という意味でのfancyの使い方は、かなり文学的だろう。この使い方を知ったのはグラナダTVの『ホームズ』だった。たしかにホームズは“I fancy that ...”と言っていたのだが、“Pray continue.”と同じくらい現代では言わないのではないだろうか。(文学的効果を狙って書くことはあるだろうが。)

また、p.415のeitherの説明は、解説と例文とがいまいち一致していない。解説では

2つのもの、または2人の中で、「どちらか」という場合にはeitherを用いる。

と説明しておいて、

Parking meters can be found on either side of the street.
パーキングメーターは道路のどちら側にもあります。

という例文を持ち出すと、読者は困惑するのではないか。この例文でのeitherは「each of two」という意味なので、次のような例文のほうがよかっただろう。

You can park on either side of the street.(OALD7)

この意味は、道のどちら側に駐車してもかまわない――ということだ。なぜeitherを使うのかというと、ふつう同時に1台の車しか運転しないので、どちらか一方に止めざるをえないからだ。

それから「2000年代は(2000、2001、2002、……2009)は、正式にはthe first decade of the twenty-first centuryという」(p.453)のは単純に間違いだ。残念ながら2000年は21世紀ではない。そもそも正式な表現があればBBCが名称を提案したりしない。詳しくはWikipediaの2000sの項を参照。

数字関係は他の英文法書と同様弱くて、p.456の説明では「1807年」の読みかたが不明だろう。また、bがbillionの略だといった説明もない。サブプライム問題以降、ニュースでよく見るようになった。それから累乗の表現では、「e^x」を「e to the x」と読むという解説がない。ついでにp.543の「参考欄」で、印欧語族では「1と2は、個と集団という根本的な違いがある感覚」というのだが、双数はどうなったのか。

しかし最後に繰り返すが、英語を教える立場の人間にはmustに近い本だろう。持っておいて損はないし、通読する価値はある。疲れるけれど、役には立つ。

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