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十日日記


2008-06-22

Link 英語は体育か

TOEICの結果が返ってきた。Listening 350、Reading 445で、Total 795点だった。試験中に実感したとおり、LとRとのバランスが悪い。先達に結果を話したら、ほとんど何も準備していない状態で800点弱というのは悪くないと労われる一方、最低900点ないと箸にも棒にもかからないと忠告される。聴き取り能力の向上には時間がかかるだろうから、半年ごとに受験してLを50点ずつ上げることを目標とした。

国際ジャーナリストの英語術 紀伊國屋書店の新宿南口店で買った1冊として、村上吉男『国際ジャーナリストの英語術』(朝日新書、2008年)を紹介する。著者は元朝日の国際部記者。バンコク、ワシントンに赴任しており、ロッキード事件でのスクープで功績があるらしい。

本書はやや雑然と構成されているが、内容を大別すると(1)英語の小ネタ、(2)著者の武勇伝、(3)報道業界日米比較、(4)体験的英語表現法、に分類されるだろう。(1)は第3章の和製英語が該当する。中身は平凡だ。一方、ベトナム戦争やロッキードを扱った(2)はおもしろいのだが、英語とは関係ない。そこでこの記事では、(3)と(4)とを取り上げることとしたい。

事故や事件が新聞記事に掲載されるとき、米国の新聞が時間・場所・人に関してどのように記載するかを記したp.198からの数ページが興味深い。

これほどの大事件でも、日付や発生時間はなく、曜日だけで伝えている。日本の新聞だと、間違いなく、「(○○月)○○日」と報道する(p.199)。

英字新聞では通常、発生時間は入れない。というよりも、時間まで入れるのは、むしろ日本の新聞の特徴と言ったほうがよいだろう(p.200)。

日本の新聞だと、交通事故でも「11日午後2時20分ごろ、台東区西浅草2丁目の路上で」と、日時と場所を特定するが、ニューヨーク・タイムズ紙では“Thursday, in Lower Manhattan”(木曜日に、マンハッタン地区の下町で)となる(p.200)。

日本の新聞では、事故に巻き込まれた人の氏名、年齢が出るが、欧米の新聞では通常、年齢まで書かれることはない。あとでまた触れるが、欧米では個人の人権重視から、事故に関係した人たちの肌の色、国籍、年齢などは、事件の解明のために不可避でない限り報道しない(p.200)。

5Wのうちwho、where、whenについて、日本の新聞は細かく書き連ねるということだ。これに対して米国高級紙では、whatやwhyに重点を置く。取材にかけられる資源は有限なのだから、これはひとつの見識であろう。著者は次のように述べている。

日本の新聞も、目指すところは欧米と変わらない。けれども、何丁目何番地や発生時刻の特定、さらに事故に巻き込まれた人たち全員の性別、年齢などを調べるために、かなりの時間と労力を割くため本質の追及に手が回りにくくなる可能性が出てくる。しかも、いったん原稿にした番地が町名変更で変わっていたとか、年齢も本当のことを言ってくれなかったなどの「直し」が出てくるたびに、事件の本質とはあまり関係のない事柄に多くの時間をとられてしまう(p.203)。

そういった事細かな部分で正確を期そうとすると、官庁や警察の発表をそのまま流すのが最も便利なのだろう。

さて、(4)はオリジナリティに富む内容である。聴話読書の4技能うち「話」をかなり重視しているのが特徴だ。例の挙げかたも、最近は高級ホテルでもルームサービスが音声自動応答になったが、発音が下手だと音声認識されない――といった新しい話題が出てくる。

まず第2章では、著者考案の「Daily Muscle Traning」(p.86)で口のまわりの筋肉を鍛えるべしと説く。これによって英語が話しやすくなるという。つづけて北米英語の発音のうち/{/、/@`/、/l/、/T/(発音記号はSAMPAに準ずる)の発音練習。易から難へと向かうように工夫されている。

ちょっと残念なのは、発音の意識が語頭と語末に集中している点だ。たとえば/l/の発音について、語頭や語末が難しいとは私には思えない。むしろ/fl/とか/kl/など、子音が連続する部分が私には聴き取れないし、おそらくうまく発声できていないのだと思う。

「英語の品格」と題された第4章も、実に興味深い。著者は26歳にしてPh.Dを取得しているだけのことはあって、「高級な」英語表現を行なう重要性を強調している。日本より学歴が強く影響する米国社会では、所属する社会に応じた表現力が求められるわけだ。中学英語でOKなどと言っている英会話本とは明確に異なる。171ページに掲げられている「英語らしい話し方」に近づくコツを引用しよう。

第一に、文章をつなぐような「and」は使わない。第二、「but」と「so」をほかの単語か、別の言い回しにするように努力する。第三、あらゆる事象を主語にもってくるように心がける。そして、第四に、使い古した単語の代わりに、格が上の単語を使うようにする。

たとえば「約」の意味のaboutを、「できるだけapproximatelyと言うようにする」(p.166)とか、become badのかわりに「deteriorate(悪化、劣化、低下、衰退させる)という便利な単語がある」(p.169)など。170ページには、「be in danger → jeopardize」「say again → reiterate」のような「格上げされた単語」の一例が掲載されている。さすがに体験から出ている言葉だけあって、一見すると難しそうに思われるdeteriorateも、COBULD 3では頻度**の扱いになっている。難語というほどではないところがミソらしい。

ちなみに、「さらに上を目指すなら」と、フランス語やラテン語の活用まで述べられている。

なお本記事の題名に取り上げた「英語は体育」というのは、第2章の名前である。体育というのは象徴的な意味で、学校で教えるべき英語は学問ではない、ということだ。つまり、主要教科ではなく副教科だと考えるべきではないか、という。これは木下是雄氏がどこかで書いていたと思うのだが、そもそも「語学」という言葉がおかしい。

個人的には、英語は体育よりも音楽に近いと思う。譜面の読めない歌手がいるのと同様、英文法を知らない話者もいる。言語学も音楽理論も、背後にある生理学的な基礎が未解明であるため、ある程度アドホックにならざるをえない。バイオリンやピアノみたいに英語技能の養成ができるかどうか、などと考えてみる。

最後にひとつ揚げ足をとっておくと、著者自身が「和製英語」に引っかかってしまっている部分があった。p.224での米国・イラン会談について報道した記事の一部だ。

Iraqi officials said the meeting in Baghdad ... was cordial and focused solely on Iraq ... Crocker said that the talks were businesslike and that there was broad agreement with Iran on policy toward Bghdad.

訳では「会談は、誠意ある空気(cordial)の中で事務的(businesslike)に行なわれ、対イラク問題だけに絞って話し合われた結果、全般的な(broad)意見の一致(agreement)がみられたという。」となっている。「誠意ある空気の中で事務的に」という表現にチグハグさを感じとる日本語話者は多いのではなかろうか。

ビジネスライクは日英で意味が異なる代表的な単語で、たとえば『スーパーアンカー英和辞典』を引いてみると、次のように注釈がついている。

日本語の「ビジネスライク」には「事務的な」という否定的含みがあるが、英語の場合はほめるときにのみ用いる。

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