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十日日記


2009-02-26

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数学でつまずくのはなぜか 近ごろ新書にご無沙汰なのが気になったので、何冊か買ってみた。そのうちの1冊が、小島寛之『数学でつまずくのはなぜか』(講談社現代新書、2008年)である。内容は、気軽に読める数学教育雑話というところだ。ただし、第5章で紹介されるフォン・ノイマンによる自然数の構成は私はまったく知らなかったので勉強になった。

著者が現場でモノを見てきたことは、「自由な数学と規範としての数学」という項目によく表れている。数学者は数学を自由なものと言いがちだが、米国の経済学者の実証研究によれば、学校教育の中での数学の成績は「創造性」「積極性」「独立心」とは負の相関を持ち、逆に「我慢強い」「堅実」「学校への帰属意識が強い」「如才ない」といった性質と正の相関を持つのだそうだ。これは語学と同じだという(p.29)。しかし、それには社会の要求という合理性があるのであって、「数学者や数学教育者の発言は、(数学者の養成機関ではなく)社会人の養成機関である学校という装置の中における数学教育に対して、何の合理性も持っていない」(p.31)と述べている。

著者は中学数学教育に関して私と嗜好や発想が非常に近い。たとえば中学3年で学ぶ2次の代数において、「展開・因数分解・平方根はすべてこの2次方程式が解けるようになるために学ぶと言っても過言ではない。であるにもかかわらず、展開、因数分解、平方根の単元での学習で、あまりにたくさんの公式の習得が要求されるため、多くのこどもたちは2次方程式にたどりつく前に音を上げてしまうのが常である」(pp.42-43)など、身にしみてよくわかる。むかし塾で成績上位の生徒を教えるときには私も2次方程式を強調し、場合によっては因数分解の段階で解かせたし、平方根も2次方程式の解として導入したりしたものだ。反対の反対は賛成とか、私もやったなあ。

平面幾何と論証との相性がよくないというのは遠山啓も述べていた。しかし論証は大事だ。では、平面幾何の代わりに何を使えばよいか。遠山が初等整数論を題材に取ったのに対し、著者はもっとゲームっぽい導入をしている。たしかに、公理は公理として現実離れしているのはありだと思う。「This is a pen.」のような状況離れしたシュールな英文が意外と英文法を学びやすいのと似たようなものだろう。

ギリシャ式数学とバビロニア式数学があり、物理学者は専らバビロニア式を使うのだというファインマンの講演が触れられている。これは『物理法則はいかにして発見されたか』に載っていた話だったと記憶するが、著者のいうアフォーダンスについてもファインマンは似たことを述べていたような気がする。つまり、自然はどういうわけか数学的に捉えられるようにできているのだ、と。

微分と積分 さて、数学を真剣に教えた経験のある者なら、何らかのかたちで遠山啓の著書に触れていることと思う。私もそうで、新書では飽きたらず十数巻組の著作集まで読み込んでいた。著者は遠山の著作と「同じフレーバー」(p.229)の本が書けたと自負しているが、遠山はそこまで自分語りをしないだろう。話はそれるが、遠山の著作で最も見事だと私が思うのは、『微分と積分――その思想と方法』(日本評論社、2001年、原版1970年)である。

最後にひとつツッコミ。「クックロビンゲーム」(pp.99-100)の項で、

「クックロビン」とは、英語圏の伝承童話マザーグースの中の「だあれが殺したクックロビン」に想を得たもの。これは、「こまどりクックロビンが殺された事件」に対して、多くの動物の証言からその犯人を捜し出す、という不思議な童謡だ。

とあるのだが、あれは本当に「犯人を捜し出す」童謡なのだろうか。いちばん最初に雀が自白しているように思えるのだが、もっと深い内容だったのだろうか。

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