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十日日記


2009-03-22

Link 『進化しすぎた脳』は素晴らしい

進化しすぎた脳 先週読んだ本の中から最良の1冊を挙げるとなると、池谷裕二『進化しすぎた脳』(講談社ブルーバックス、2007年)を措いて他にはない。著者の書籍を読むのは『記憶力を強くする』以来だが、筆の冴えは相変わらずだった。

私が感じ入ったことは2点ある。第1は、脳と体との関係について。第2は、脳と心との関係について。

哺乳類は6層構造の大脳皮質を手に入れてから、基本構造を変化させず表面積(つまりシワ)を増加させるだけで性能向上を果たせるようになった。その結果、現在の人類の脳は「宝の持ち腐れ」になっている。水頭症の症例研究によれば、生まれながらに大脳の90%を失っていても成長や知能にはまったく支障がないそうだ。これが「進化しすぎた脳」という題名の由来である。

脳にとっての環境は体であり、体にとっての環境は世界である。脳は必要以上に進化を遂げたわけだが、体のほうは世界に適応する以上の進化は遂げない。人間にもし指が20本あったら、もっと大脳が活性化されただろうと著者は言う。イルカの不幸(?)は大きな脳を持ちながら生息環境のために単純な体しか持ち得ないことで、それが知能発達上の制約になっているという。

私個人の思いつきをメモしておく。脳が体という環境が必要とする以上に過剰に進化したことについて、本当は理由などないのだが「未来への予備」だと前向きに捉えることができると著者は述べている(p.87)。人間にとって幸いだったのは、体自身もまた拡張することができることだろう。たとえば自動車を車庫入れするときは、体全体が車になっているような感覚にとらわれるし、実際脳もそのように感じているそうだ(同書では道具を使うサルの例が挙がっていた。棒を持ったサルの棒の先は、ちょうど指先が反応するのと同じ脳の部位が反応するという)。

第2の論点に移る。哺乳類にとって最も古くから存在する感情は恐怖であるという。恐怖を司るのは扁桃体と呼ばれる部位だが、ここから直接的に恐怖感情が引き起こされているわけではない。扁桃体から大脳皮質へと信号が送られ、それによって対象物を忌避する行動が発生するとともに、恐怖感情が発生するのだそうだ。ちなみに扁桃体を失った動物は本能が剥き出しになるという。著者は、「動物には『本能』の欲求がまずあって、それを『恐怖』によってがんじがらめにした状態が『理性』ということになるかな」(p.175)と述べている。

話が少し逸れてしまったが、大事なのは行動と感情とが別経路になっているということだ。このため著者は、動物には人間ほどの複雑な感情は存在しないだろうと予測している。

同書は数字が具体的でリアリティを増している。たとえば脳の消費電力を20Wと言ってみたり、人間の視神経を100万画素のデジカメにたとえてみたり、大脳はすべての処理を100ステップ以内に終えると言ったり。こういった数字が普通に出てくるのは、プロなればこそだ。

とにかく本書は読むべきだ。

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