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十日日記


2009-05-08

Link プレイン・イングリッシュ

プレイン・イングリッシュのすすめ Plain Englishを知ったのは、『金融工学者フィッシャー・ブラック』によってだった。ブラックの簡潔な文体は、Rudolf FleschによるPlain English運動を信奉していたことの反映であるという。それで興味を抱き、概説書を探して見つけたのがケリー伊藤『プレイン・イングリッシュのすすめ』(講談社現代新書、1994年)である。以下ではPlain EnglishをPEと略す。

同書は6章構成になっている。第1章ではPEの導入。1978年にカーター大統領が大統領命令でPEの使用を連邦職員に対して命じ、行政だけでなく司法の場にも広がっていった。これは昨今ではもっと広くPlain Languageと呼ばれているらしく、米国政府のサイトも存在する。私もいま見つけたところなので、あとで少し詳しく読んでみたいと思っている。

第2章では、PEの十則を掲げている。単語は短く簡単なものを使うとか、余分な単語を使わないとか、否定文や受け身を避けて能動文で動詞を生かした文を作るとか、ほとんどの規則は常識的なものだ。しかし、第8の「ひとつの文にはひとつの情報を」については、学ぶところがあった。この内容は、『理科系の作文技術』で有名な「事実と意見を峻別せよ」ということである。たとえば「Tom is a good-looking eye doctor.」(トムは恰好いい眼科の先生です。)は英語としては不可である。なぜなら、doctorを修飾する2語のうちeyeは事実だがgood-lookingは意見だからだ。したがって、「Tom is an eye doctor. He is good-looking.」のように文を分けるべしという。

第3章は発音練習で、この章はPEとは関係がない。しかし、発音のために口の筋トレをするというのは実践的だと思う。たとえばLの発音練習は、指が立てに3本入るくらい口を開けて舌を上の歯の根本に押し付けるというもので、実に細かい指導だ。

第4章では実際に英文を作成する段に入る。ここでは、「Detach ideas from words.」(言葉とアイデアを切り離せ)と強調される。これは第6章からの引用になるけれど、たとえば他人から本を借りたときなどに、日本語で「いつまで返せばいい?」と聞くのは自然なことだ。しかし同じことを英語では「How long can I keep this book?」と言うのが自然で、返すのではなく借りる期間を尋ねるようになっている。このほか、「上質の物を買えば結局損はない」が「Quality pays.」、「命あっての物種」が「Life comes first.」などなど、簡単な動詞を使った表現を示している。また、言葉ではなくアイデアを引き出すための訓練として、英文をparaphraseすることを薦めている。これはよいアイデアだ。

第5章は、同氏の講座を受講した者たちの成功談である。ここでは、事実と憶測とを区別する例が印象に残った。たとえば首相が健康問題を口にして職責を降りたとき、「The Prime Minister resigned because of poor health.」とするのはよくないという。なぜなら健康問題が事実かどうか不明だからで、「The Prime Minister resigned citing his poor health.」のようにすべきとのこと。

最終章の第6章では、基本単語76を取り上げて例と解説とを述べている。ただ、例文が少ないので実践的とは言えない。著者の別の書籍を当たったほうがよさそうだ。Plain English in CyberSpaceも参考にされたい。ちなみに著者について、私は長らくテリー伊藤の二番煎じみたいな人だと大いに誤解していた。大変申し訳ないことである。

Tags: 言語
本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
Link tmrowing (2009-05-09 19:44)

ケリー・伊藤氏の著作は内容に重複するものもありますが、おおむね良質だと思っています。<br>もうご存じかも知れませんが、『英語パラグラフ・ライティング講座』(研究社、2002年)も、第一章の「情報の整理」で国内で発行されているものでは唯一といってもよい良質のエクササイズが収録されていて生徒にも教員にも勧めています。<br>Plain Englishに関して私が参考にしているのは、<br>Martin Cutts (1995), The Plain English Guide (Oxford) です。<br>表現、文構造、パラグラフの構造だけではなく、idea generationの改善まで含まれていて教師の英作文能力向上にも役立つ内容だと思っています。<br>ご参考になれば。

Link na (2009-05-11 01:57)

ありがとうございます。とても参考になります。<br>こんど書店に行ったとき、覗いてみたいと思います。

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