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十日日記


2009-05-23

Link 優生学と人間社会

優生学と人間社会 極東ブログで同書が取り上げられていたので読んでみた。おもしろい。ちゃんとした書評は上のリンク先を当たってもらうとして、ここでは雑感を書き連ねることにする。

優生学に対して人びとが眉をひそめるようになったのは70年代以降のことであるという。公民権運動やウーマンリブと無関係ではないだろうし、標準社会科学モデルとも関係があるだろう。スタートレックでも優生戦争が出てくるけれど、同じような時代だ。

優生学がナチスと不用意に結びつけられタブー化される以前には、検定教科書でも次の文言が出てくる。

国民の遺伝的素質を改善し向上させること、すなわち、次の世代の国民に、肉体的にも精神的にもよりすぐれた民族的素質を伝えてゆくことが国民優生である。わが国では1948年に優生保護法が制定され、とくに悪質な遺伝的疾患が伝えられることを防止するため、精神分裂病・そううつ病・全色盲・血友病・遺伝性奇形などの遺伝病を有する場合や、出産により母体に危険がある場合には優生手術や人工妊娠中絶が実施できることになった。(中略)国民の素質を向上させるという優生結婚の立場から、結婚をするにあたって、みずからの家系の遺伝病患者の有無を確かめるとともに、相手の家系についてもよく確認することが重要である。家系の調査範囲は、両親・兄弟姉妹はもとより、祖父母やいとこまで及ぶことが望ましい。(『保健体育 改訂版』一橋出版、1971年)

このように、優生学は社会思想と結び付いてる。初期の主張は、医療水準の向上によって死すべき者が死なずに済んでいること、戦争によって健康な若者から先に死ぬことで、遺伝子の劣化(逆淘汰)が進むことを危惧している。それを食い止めるための制度を導入せよ――というものだった。

政策として優生学が採用されたのは、福祉国家の形成と関連が深い。ドイツではナチス以前にワイマール時代から導入されたし、ヨーロッパで盛んだったのはデンマークやスウェーデンなど北欧諸国だった。先天的な障害者の発生を抑えることができれば、そのぶん現存する障害者への支援を手厚くすることができるという理屈は、たしかにその通りである。優生学に基づく諸政策に対して批判ができるようになったのは、それだけ社会が豊かになった証拠だろう。

さて、現在では医療技術がさらに進んでいる。不妊や断種は親に対する手術だが、出生前診断に基づく選択的中絶は子に対するものだ。これを認めるかどうかは意見の分かれるところである。

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渡辺 慎太郎(na@10days.org)

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