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十日日記


2009-07-16

Link 創造はシステムである

創造はシステムである 中尾政之『創造はシステムである』(角川書店、2009年)を読んだ。まあまあというところ。創造のシステム化の話はともかく、日本の業界慣行に対する観察や意見はおもしろい。

まず注意しておかなくてはならないのは、同書による「創造」の定義は字引にあるものとは異なる点だ。

本書では、「創造」を「自分で目的を設定して、自分にとって新しい作品や作業を、新たに造ること」と定義した。/「広辞苑」(新村出編、岩波書店)で調べると、「創造」は単に「新たに造ること」である。だから本署では敢えて、それに「自分で目的を設定して」と「自分にとって新しい作品や作業を」の2つを加えて、創造の領域を広げたのである(p.3)。

とのことだ。残念ながら、上の文章が私には理解できない。修飾語を2つ加えて対象を限定したのだから、創造の領域は広がるのではなく狭まるのではなかろうか。

創造の過程をキャッチフレーズめいて表現すると、「思いを言葉に、言葉を形に、形をモノに」(p.31)となる。「言葉」は要求機能、「形」は設計解と置き換えてよい。また、思い→言葉の過程をリサーチ、言葉→形の過程をソリューションと著者は呼んでいる。

このリサーチは、そうやさしい作業ではないと著者は説く。しかも「日本は、要求機能を意識しない設計文化を醸成してきた」(p.53)。製造業では、自動車なら自動車を丸ごと1台輸入して分析するため、要求機能と設計解とを同時に持ち込むことになる。たとえばアクセルやブレーキはなぜ足で操作するのか。これは歴史的経緯から生まれた要求機能だが、こうした側面はあまり注目されない。「日本に足りないのは、リサーチできる人である」(p.58)と言うのだが、「お金はソリューションだけに払うのが日本の商慣習」(p.58)なのであれば、そうした人材が育たないのは至極納得のいく話だ。

ともあれ、ひとまず要求機能が定義できたとすれば、今度はいかに実現するかに話が移る。第2章で著者は「賢い頭の動かし方について、人類共通で誰でも使える一般手法を教える」(p.79)。その秘密兵器としてTRIZを紹介し、具体例を挙げながら解説している。ただし、こうした発想のパターンを活用するためには、身近な問題をいったん抽象化する能力が不可欠だ。著者はこのことを「思考の上下運動」と呼んでいるのだが、「半数の人間はこの思考の上下運動ができない」(p.92)という。誰でも使えるわけではなさそうだ。

つづく第3章では、独立設計と干渉設計とについて語られる。アメリカ人は独立設計を好み、日本人は干渉設計を好む。

何の製品にせよ、日本の企業は製品を最高条件に調整してから出荷する。だから新品はものすごく良い性能を持つ。ところが、前述したようにメンテナンスがしにくい。とにかく、すべての部品を調整して良好な条件を出しているから、ひとつの部品でも交換すると、もう1回、全部品の調整をやり直さないとならない。

工程設計でも同様である。手直しや手戻りの工程が異様に多い。日本の生産は歩留が高いと評価されるが、直行歩留は低い。日本では、工程ごとに不良品を手直しして良品に蘇らせて、次の工程に送るからである。だから、最初から最後まで良品で合格し続けた製品は、実は非常に少ないのである(pp.166-167)。

第4章は、独立設計をモジュラー型、干渉設計をインテグレイテッド型と呼び、どちらも必要であると説く。ピラミッドで言えば下層と上層をインテグレイテッド型が占め、ボリュームのある中間層をモジュラー型が占める。たとえば外食で言えば、最下層に来るのは個人の零細食堂、中間層がチェーン店、上位層が高級レストラン、という塩梅だ。

同書の欠点は、文章が下手なことである。「失敗学」の畑村洋一郎先生は文才がないと私は思っているのだが、最初の数ページを読んだときに同じ臭いを感じた。途中で「筆者の恩師の畑村洋一郎先生」(p.79)と出てきて、思わず笑ってしまった。「長期にわたって師事すると、その次に先生が何を言うのか大体、わかってくる」(p.80)というレベルになると、文章も似てくるものなのだなあ。

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