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十日日記


2009-08-09

Link 偶数章が読める本

ラーメン屋vs.マクドナルド 竹中正治『ラーメン屋vs.マクドナルド――エコノミストが読み解く日米の深層』(新潮新書、2008年)を読んだ。Amazon.co.jpのページを見ると、出版社・著者からの内容紹介と「BOOK」データベースの内容紹介とが末尾だけ異なっている。

出版社/著者からの内容紹介 アメリカ人はマックに頼り、日本人はラーメンを究める。大統領は希望を語り、総理大臣は危機を語る。アメリカ人は対面でディベートし、日本人は匿名でブログする。日本に「ビル・ゲイツ」はいないが、小金持ちならたくさんいる......。日米双方の事例を照らし合わせると、それぞれの強みと弱み、そして社会の特徴がくっきりと浮かび上がってくる。世間にはびこる通説をデータと実例で覆す、目からウロコの日米比較。

内容(「BOOK」データベースより) アメリカ人はマックに頼り、日本人はラーメンを究める。大統領は希望を語り、総理大臣は危機を語る。アメリカ人は対面でディベートし、日本人は匿名でブログする。日本に「ビル・ゲイツ」はいないが、小金持ちならたくさんいる…。日米双方の事例を照らし合わせると、それぞれの強みと弱み、そして社会の特徴がくっきりと浮かび上がってくる。世間にはびこる通説をデータと実例で覆す、目からウロコの日米文化論。

「日米比較」と「日米文化論」とのどちらが正しいか。本書ではどちらも触れられているのだが、文化論のほうは私にはあまりピンと来なかった。第1章・第3章・第5章がそれで、与太話の域を出ない。第2章・第4章・第6章には、読んでためになる部分がある。なぜか偶数章が読める本だ。

第2章で著者は、日本の行動パターンを危機感駆動型、米国のそれを希望駆動型と命名している。日米の週刊経済誌で肯定的・否定的な表紙見出しの割合を比較すると、日本が23:73、米国が25:32で、「崩壊」や「危機」といった言葉で危機感を煽る見出しが日本の週刊経済誌には多いそうだ。政治家でも、「米百俵」のような忍従を説く者が日本では受けるのに対し、米国では希望と実現に向けたビジョンとを語る楽観的なリーダーが受けるという。そして著者は、日本でも米国に倣って希望駆動型へとシフトしていくべきだと説く(pp.47-48)。

この自説を述べたところ、危機感駆動型のわりに日本は危機管理が甘いではないかというツッコミを読者から著者は受けたという。そして、その原因を「無謬信仰」に求めている(p.60)。システムが無謬を前提としているため、システム自体が動揺すると何をすべきかわからなくなり、いたずらに危機感を強調する結果となる。「無謬信仰と危機感強調カルチャーはこうして併存しているのではなかろうか」(p.62)と推測している。さらに、その無謬信仰がリーダーシップの不在に繋がっていると説き、丸山真男やウォルフレンを援用している。ここまでは納得できる。

納得できないのはこの先で、「危機感強調型のカルチャーはリーダーシップ(主体的意識)の不在と表裏だとも言えよう」(p.64)という部分だ。危機感駆動型と無謬信仰とは並列しており、リーダーシップ不在は無謬信仰のほうに結び付くのではなかったのか。それがいつの間に危機感駆動型と表裏の関係になってしまったのだろうか。それとも、危機感駆動型と無謬信仰とは分離不可能な何かがあるのだろうか。

私個人としては、危機に直面してから動いたのでは遅いこともあろうと思うが、危機「感」で動けるなら十分ではないかと思う。「各人の弱点を強調、矯正するよりも、強みを伸ばす姿勢」(p.48)を採ったほうがよいと著者も述べている。パラノイアのごとく、些細なことにも危機を感じとって対処できれば素晴らしい。ともあれ、著者の文化論については聞き流して支障ないだろう。

一方、第4章や第6章では本業に絡んだ数値例が出てきており、こちらは読める内容だ。たとえば日本人が株式などのリスク商品に手を出さないのは文化的背景があるのでは「ない」ということを、数字を挙げて説明している。理由のひとつは、すでに住宅というリスク資産をかなり抱えているため、もう1つは、残高が数千万円という家系金融資産が広く薄く分布しているためである。一方の米国は、数億円以上の富裕家系に資産が集中しているため、家計がリスクを取りやすい。

第6章では、米国で90年代に顕著になったクレジット・ヒストリーなどのスコアリングについて触れている。特に第2節の「『新銀行東京』失敗の本質」(p.179)がよい。スコアリング方式の融資モデルが確率的なアプローチであることが理解されていないのが最大の問題だというのだ。

金融機関は債務者を多面的な項目で機械的にスコアリング(評点)し、その属性に従って組織内部で格付けを行なう。たとえばランク1からランク5まで格付け分類(セグメント化)する。「格付け」はイコール「一定期間の債務不履行による損失確率」である。ランク1は最も損失確率が低いセグメント、ランク5は最も損失確率の高いセグメントとなる。

このスコアリング方式が成り立つために大切な前提条件が2つある。ひとつは与信ポートフォリオの分散が高いこと、すなわち特定の業種、特定の格付け、特定の企業などに金を貸し込みすぎないことである。従って貸手は「メインバンク」など志向しない。新銀行東京の1社当たりの融資限度は最大5000万円だったと聞くが、中小零細企業を融資対象にする場合、おそらくこの限度額は桁がひとつ大き過ぎる(pp.183-184)。

もう1冊、伊藤真『選び抜く力』(角川書店、2009年)を読んでみたのだが、こちらについては語るほどのものではない。

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