2010-03-06
Link 統計的思考による経営
吉田耕作『統計的思考による経営』(日経BP社、2010年)を読む。著者は日本に品質管理(QC)を普及させたデミングの弟子で、「Joy of Work」を旗印にコンサルティング活動を行なっている。統計的思考=全体最適という考えから長期的視野を重視し、その点で旧来の日本的雇用慣行を再評価している。
品質管理というと、とかく製造業を思い浮かべがちだ。私自身、現在の仕事に就かなければ品質管理に関心を持たなかっただろう。しかし米国では80年代後半に日本から品質管理が逆輸入されると、製造業だけでなく広くサービス業や政府組織にも広まったという。著者は、米国の90年代の生産性向上の一因を品質管理の逆輸入に求めている。
本書で使われている統計は主として記述統計で、もっとはっきり言えば可視化だ。親和図・特性要因図・パレート図を使った改善のプロセスを詳しく紹介してくれている。また、バラツキに関しては6σよりも古典的な3σのほうが有効だと唱え、管理図を時系列データだけでなくパネルデータ(ただし振る舞いが安定的なもの)にも使用している。たとえば著者は次のものを管理図の候補に挙げている。
- 特約店別売掛金残高/月間売上高
- (特約店別売掛金残高+受取手形残高)/月間売上高
- 品目別在庫率/品目別月間売上高
- 品目別在庫棚スペース/品目別月間売上高
- 納期遅れ比率
- 製品別顧客苦情数
- 返品率
- 顧客満足度
- 従業員満足度
- 従業員回転率
- 支店ごとの一般管理費/売上高
管理図を用いて3σを超える異常を見つけ出し、その要因を取り除くのが現場の仕事。一方、3σ内に収まる偶発要因による変動の改善はトップマネジメントの仕事であるという。
吉田流QCの基本は10名未満の小集団によるボトムアップな改善で、会社単位では一貫して競争よりも協調を取る。従業員の生産性を奪うのは恐怖だと述べ、数値目標の設定は無意味だと説く。ただ、日本の場合は特に文科系人材の専門能力が低いので、せっかく小集団を組織しても知識の総量があまり拡大しないという欠点がある。構成員が似たもの同士だと競争になりがちだ。
このほか、俗流社会学に基づいて日本社会についてもあれこれ語っていらっしゃる。これらに関してはコメントを差し控えたい。
2010-03-07
Link わたしの外国語学習法
ロンブ・カトー『わたしの外国語学習法』(米原万里訳、ちくま学芸文庫、2000年)を読んだ。もともとは1981年に翻訳・出版された書籍を文庫化したもので、著者はハンガリー人。ヨーロッパ系言語14言語に加え、中国語と日本語とをあるていど習得している。外国語学習法本の古典と言ってもよいかもしれない。
漫然と書かれているし指南内容は常識的なものなので、本書から学んだ事柄は多くはない。著者は最低限の学習密度として週12時間を掲げているし、「あまりにも根気のない人が多すぎる」とも述べている。
学校教育において必須となるロシア語教育がどうも功を奏していない原因は、……(中略)……ロシア文字のせいなどではありません。……教育法のせいでもありません。……ロシア語そのもののせいでもありません。……学習に費やされる時間量が、しっかりした、着実な知識の習得には、不足していることが多いのです(pp.66-67)。
発音に関しても、「聞く」だけではダメで、ソルフェージュのような基礎的訓練が必要だと説く。
本格的に外国語の発音を習得しようと考える者は、丹念に《ドレミファ練習》をしなくてはなりません。そうやって、母国語にはない音声や音声の組み合わせ方の練習をするのです。……まず何よりも、発音の違いが語の意味をも変えてしまうようなものに取り組むのです(pp.114)。
外国語はいかにすれば早く上達できるか。「結果=(時間+意欲)÷羞恥心」と著者が定義しているのには納得した。完全主義で自意識過剰な者は言語習得に向かないのだ。男性よりも女性のほうが向いているという著者の指摘は当たっているだろう。
私自身は、本書を通じて知った当時のハンガリーの言語を巡る状況がおもしろかった。一例として、次の文を挙げてみる。
前世紀の半ばまでラテン語を公用語と定めていたハンガリーでは、……高位の貴婦人たちは、夫たちが、おのれの身分を思い知るが良いと言わんばかりに、これ見よがしにラテン語で《議論》し始めると、取り乱してしまうほどに悔しがります(p.51)。
2010-03-09
Link 衆寡敵せず
職場で使っているデルOptiplex SX280というPCは、ビデオ出力がDVI-I端子になっている。これを22インチのWSXGA+液晶モニターにデジタル接続している。この解像度がデジタル出力できる限界みたいで、WUXGAは映らない。また、いわゆるフルHDも映らない。小型PCなので拡張スロットもない。
ところでDVI-I端子からはデジタル・アナログの両方の信号が出ているので、信号を分離してデュアルディスプレイとして使用する機能をSX280は備えている。信号分離のための「Yドングル」とデルが呼ぶ二股ケーブルが付属していたのだが、他部署に差し上げてしまった。そこで、DVSショップ楽天市場店でDVIP/DVHDJ-002ブレイクアウトケーブルを購入する。送料込みで2,600円。
装着して2週間が経つ。2画面環境での作業は快適だ。参照用画面を常に開いておけるのが嬉しい。
2010-03-11
Link コンビニのあとに
近所はコンビニが乱立気味で、自宅の前から1ブロックおきに直線上に3店舗が並んでいた。おまけに昨年暮れには少し先にまた別のコンビニが開店し、競争が激しくなったのだろう。ついには3店舗のうち真ん中に位置していたam/pmが閉店した。
そのあと程なくして改装工事が始まった。何の店が入るのか興味深く眺めていたところ、新しくできたのは保育所だった。株式会社アルコバレーノが手がけているらしい。たしかに保育所はコンビニの次のフランチャイズ事業として見込みがあるのかもしれない。
2010-03-12
Link 待ち行列の平均待ち人数
型の待ち行列で、平均到着率を
、平均処理時間を
とする。これらの積を利用率
とすると、平均待ち人数は
となるらしい。近ごろは物覚えが悪くなったので、この式を自分自身に納得させる何かをでっち上げる必要に迫られた。とりあえず、次のようにして憶えている。
利用率の意味を言葉で書くと、1人以上が列に並んでいる確率だ(
)。列に誰も並んでいない確率は
である。この2式の関係をにらむと、列に
人並んでいる確率は
だろう。無限大までの和を取ると
となり、辻褄が合う。
いま知りたいのは「平均で何人並んでいるのか」という期待値なので、
を計算したい。ここで、
だから、
を得る。
2010-03-14
Link 青いインク
私は青系統のインクが好きだ。書類に書き込む際など、黒よりは青のほうが目立って便利だ。とはいえ、結局は好みの問題だろう。
最近、ラミーのサファリにターコイズのインクカートリッジを入れた。この色は三菱ユニボールシグノの空色に近く、とても気に入っている。ただし複写機に映りにくいし、署名に使うのは憚られる。万年筆をもう1本買ってブルーブラックを入れようと思っていた。
古典的な没食子酸鉄インクを措いて染料インクに話を限定すると、ブルーブラックには黒の強いものと青の強いものとがある。ラミーのカートリッジは前者で、ちょっと野暮ったい。パーカー(Quink)のカートリッジは後者で、色自体は好みなのだが少し滲みやすい。
購入した万年筆は例によって鉄ペンで、ウォーターマンのフィリアス(ミネラルブルー)である。目方が22gと軽いので、メモを書き殴るという私の用途に合っている。
昼休みに日本橋の丸善に出かけ、ブルーブラックのカートリッジインクを物色する。たしかにあることはあるのだが、予想よりも高い。標準サイズで5本840円という価格には驚いた。アウロラやパーカーは定価で525円、ラミーは定価で420円である。
そこで方針転換し、コンバーター+ボトルインクでいくことにした。こうなるとインクは何を選んでもよいわけだが、今回は素直に純正のブルーブラックにした。ウォーターマンの瓶は形状がかわいい。色味はWindows 2000のデスクトップのような感じで、青+赤ではなく青+緑に近い。
追記20100317。ウォーターマンのカートリッジが高いというのは私の勘違いで、1箱に入っている本数が8本だった。実売価格やインクの量は調べていないが、定価ベースで1本100円というのは舶来万年筆の標準的なカートリッジ価格だ。
2010-03-16
Link Nokia N800と数式処理
2007年11月に購入したものの使い道を見つけられずに放置していたインターネット端末ノキアN800を、ひさしぶりに段ボール箱から取り出してきた。Wikipediaの記事「Maemo」(OSの名称)によれば、N800で使える最新版はDiablo(OS 2008 / 4.1)で、今後はインテルのMoblinと合併しMeeGoとなるのだそうだ。私の機械にはOS2007が載っていたので、更新する。
OS2008になってroot権限を取るのが少し手間になった。以前はSSHdをインストールしてroot/rootmeでアクセスできたのだが、今度は事前にR&Dモードにしておかなくてはならない。この操作はWindows PCでは行なえず、UNIX系のOSを必要とする。自宅にはLinux機がないので、Knoppixから起動してFlasherを使った。なお、FlasherはRoot Shellで使う必要がある点に注意する。さもなくばUSB接続したN800を見つけてくれない。
ところで、再びN800に興味を持ったのはグラフ電卓としての使い道(グラフ電卓の世界、数ナビの部屋、Ticalc.org)に思い至ったからだ。N800で使える数式処理関係のソフトは「Scientific apps on N810」を参照するとよい。TiEmu2は問題なく動くが、グラフ描写は実機の1/4ほどの速度な上、アイドル時でもCPU使用率が80%ほどになる。もっと簡単な関数電卓が必要な際には、MathJinniを利用する手もある。
2010-03-22
Link 例文が魅力的な単語帳
英語で身を立てている相方の何気ない一言から学ばされることがある。
昨日たまたまテレビをつけたところ、テレビ東京のワールドビジネスサテライトが放映されていた。その女性司会者を見るやいなや、相方が「この女、英語をしゃべりそうな口してるなあ」という。発話を聞くなり、「日本語より英語のほうが得意っていう発音やな」。口の動きや子音の響きでわかるのだそうだ。確かめてみると、司会者の小谷真生子氏は小学校時代の3年間をオーストラリアで過ごしており、卒業高校も米国だった。
私と相方とは英語の学習歴がまるで違う。私は小学校時代こそ英会話教室に通ったものの、中学以降は完全に受験英語漬けだった。言語4技能のうち、読むことしかできない。いっぽう相方は高校が外大付属校の国際科で、カナダに留学し、大学院はイギリスだった。高校時代には、8人の外国人教師から英文レポートやエッセイなど形式に従った文章を書く訓練を受けたそうだ。
そんな相方にも弱点はあって、それは語彙である。大学受験を経験していないため、『試験に出る英単語』も『英単語ターゲット1900』も知らない。仕事上定期的に受験するTOEICの対策には別の単語帳を使っていた。試験が終わったので、私が借りて読んでいる。Susan Anderton、中村 紳一郎『TOEIC TEST完全攻略3000語――目標スコア600-900』(語研、2001年)という単語帳だ。
同書は単語セット60語を1グループとし、各グループごとにフレーズと会話例とがつく。4グループを1ユニットとしてまとめてあり、本書全体で50ユニットからなっている。都合200セットのフレーズと会話例とが納められている計算だ。
フレーズをベースにしているのはP単と同じだが、P単と異なり2語と限定はしていない。簡単に言えばV+Oパックとでも表現できるだろうか。「remodel the kitchen」(台所を改修する)とか「calculate pi to 300 digits」(円周率を300桁まで計算する)とか、そんな感じでフレーズが並べてある。このフレーズ集は悪くない。
会話例は本書の最もよい部分だと思う。たとえば人名が豊富に出てくるのが新しい。それに言い換えも学べる。一例としてGroup 29の会話例を引用しよう。
M: I have an announcement to make, everyone. Jesse and I are engaged! She said yes last week, on New Year's Eve.
F: Oh, Phil, that's wonderful! You have my blessing. When are you two going to tie the knot?
M: We'll walk down the aisle in six months. She won't move out of her parents' house until we exchange vows, though.
一連の会話から、挙式に当たる表現として「tie tht knot」「walk down the aisle」「exchange vows」が存在することを学べるのだ。よく書けていると感心する。
語彙水準の選択には疑問に感じる部分がなくもない。簡単すぎると思われる語が見出し語になっている一方で、初見の単語が会話例にさらっと出てくる。もっとも私はTOEICの傾向をまったく知らないので、TOEIC向けの編集としては適切なのかもしれない。
残念なのは付録CDだ。発話者が2人しかいないので単調になるのは否めないが、これは仕方がない。ただ、フレーズが未収録なのはどうかと思う。出版年が古いので言うのは酷だが、iPodなどの小型デジタル音響装置で聞く人などの存在を考えると、CDを付けるよりも音声ファイルをダウンロードできるようにしてくれるほうが助かるだろう。
2010-03-23
Link 無線LAN機器を交換する
実家の無線LANアクセスポイントには、リンクシスのWAP54G-JP V2という機械を使っている。購入して4年を過ぎており、数か月にいちど止まるようになった。そろそろ買い換え時だろう。
実家はNTT西日本のフレッツ光プレミアム(マンションタイプ)に加入している。ひかり電話も契約しているため、都合3台の機器をNTTから借り受けている。そこに無線LANアクセスポイントを置くから、合計4台。NTT東日本なら1台にまとまるのだが、母が問い合わせたところでは、NTT西日本は一体型の機械を提供していないらしい。
家庭用の無線LAN機器に関しては、私自身が信頼しているメーカーは1社しかない。日本電気だ。自宅は11b/g環境なので、Aterm WR8150N(PA-WR8150N)を購入。電波強度が向上し、リピーターが不要になった。
2010-03-25
Link ヤマハRT58iを設定する
無線LANに引き続いてネットワークの話題をすると、このまえヤマハのNetVolante RT58iを設定した。同社のルーターは、中小企業やSOHOにとっては定番だ。
かつてフレッツの契約で貸与される機械には、モデム機能はあってもルーター機能は付いていなかった。いまでは、実家のフレッツ光プレミアムも自宅のBフレッツも貸出機にはルーター機能が搭載されている。機械の品質は悪くなく、数万円クラスの業務用ルーターに近い。(なお、ヤマハ製品が人気を博す理由の1つは、業務用としては比較的安いことだ。海外の取引先とVPNを構築する場合など、取引先からシスコ製品を求められることがある。こうなると家庭用機器との価格差が1桁では済まない。)
家庭用と業務用との大きな違いは高負荷時や連続運転時の安定性で、値段が1桁違うのは伊達ではない。FTTHともなると動画のストリーミングなど家庭でも一定の負荷がかかるのだろう。この負荷に耐えきれず安物ルーターが落ちたところで、素人は不良の原因がフレッツであると勘違いしかねない。それくらいならば、最初からルーター機能を付けた製品を貸し出しておくほうが安全だ。
RT58iにはブラウザーから操作できるGUI画面がある。とはいえ、そこで全機能が網羅されているわけではない。たとえば静的IPマスカレードの設定では、ブラウザーからでは10件までしか登録できないようになっている。そこで、telnetなりシリアルなりで接続してCLIで11件目以降を登録する。いったん登録してしまえば、その修正はGUIで行なえるのが不思議なところだ。
2010-03-28
Link コーヒー党向きの紅茶
人をコーヒー党と紅茶党とに二分するなら、私は確実に前者である。カフェイン中毒になっているのか、寝る前にコーヒーを飲むのは日常茶飯事だ。紅茶も毎日飲んでいるが、茶葉のうまみを引き出す努力をしていない。
紅茶は何種類か試してみた。マリアージュ・フレールのマルコポーロは、味はともかく香りは最高によい。とはいえ、同社は一昨年の原油高の折に送料高騰を理由に値上げしたまま、いまだに価格を下げない。(100g缶の日本での定価は2,500円。海外では12.20ユーロである。)ちょっとどうかと思う。
コーヒー党としては濃いめを好む。いま気に入っているのが、ウィタード・オブ・チェルシーのアールグレイだ。他社のものと比較してベルガモットの香りが濃厚な気がする。ウィタードは昨年末か今年初めかにネット通販をやめてしまったのだが、ファンタジアという店(Yahoo!ショッピング)が徳用パック(100g袋で1,050円)を扱っているので、私はそこで購入している。
2010-03-29
Link 平均移動距離
以前ブックオフで買った問題集には、前に使っていた人の付箋や書き込みが残っている。番号の横に「難しい」と書かれていたのは、次のような問いだった。
一列に並んだ600のハードディスク区画をヘッドがランダムに移動する。このときヘッドの平均移動距離はいくらか。
私は数学が苦手だから、もっと単純な問題に置き換えないと解ける気がしない。600という数字に意味はないので
勘に任せるなら、0から1までの数直線に点を2つ取ったときの平均的な距離は、点を等間隔に並べた状態の距離と同じではなかろうかと想像できる。つまり1/3だ。今回の問題に即して言えば、600の1/3で200となる。
もう少しちゃんとするなら、
を計算することになる。手計算するなら絶対値を外して
を逐次積分すると1/3が得られるが、絶対値付きの積分を関数電卓に計算させてみると正確な値を弾き出してくれた。
上の説明が納得できないときには、まじめに立式することになろう。[0, 1]上の任意の点を固定し、次の点がそれより左にあるか右にあるかで場合分けして期待値を出す。本質的に同じ問題が「ソートの平均要素移動距離」として工藤拓氏のブログに載っているので、そちらを参照。